馬の質について考える

乗馬は馬次第、とよく言われる。多くの人はそれを、「良い馬を買えば競技会で勝てるから」と考える。それも一理あるが、実は一番大きな利点は、良い馬からは、より良いバランスと正しいリアクションを与えられるため、シートも扶助もより速く習得できることにある。

馬も人と同じように真っ直ぐではない。それを特にケアしないで乗っていると、馬は曲がったままで運動することを覚える。だから、たいていの馬はどちらかがすごく硬くなるのだ。曲がっている馬をいかに真っ直ぐにしていくか、というのは調教の大きなテーマの一つだが、それには「まっすぐ」の状態が分かっている必要がある。しかし、常に曲がっている馬に乗っていたとしたら、「まっすぐ」の基準が存在しない。それでもいろいろな馬に乗ることでそれを学んでいくことはできるが、初めにきちんとした「まっすぐ」の基準を知れば、自然に馬上でのバランスは習得でき、馬が「どう曲がっているか」という感覚もつかんでいけるのだ。

また、良い馬は騎手の扶助に対して即座に、そして正しく反応する。競技馬と一般的なクラブの練習馬の胴体を見比べてみてほしい。良く調教されている馬は、背中の筋肉がしっかりついていてお腹がしっかり締まっているが、一般的な練習馬は背が沈み、お腹の肉だけが出っ張ってきている馬が多い。これは、体幹の筋肉を使っているのか、ただ肢だけを使って動いているのかの違いが表れている。体幹を使っている馬たちは反応が良く、騎手の扶助にダイレクトに答える。これにより、騎手は自分の扶助が正しかったのか間違っていたのか、馬からすぐにフィードバックをもらえる。しかし、練習馬はあらゆる騎手の間違いを受け入れているため、たとえ間違った扶助であっても、なんとなく雰囲気で(!)答えてくれている場合が多い。これは初心者にとってはありがたいことだが、乗り続けていても何が馬に伝わっているのか分からないままになってしまう!
そしてなにより、良い馬は背中が動く!!この揺れと一致して動く感覚は何事にも代えられない。馬上で至福の時を感じることができる。

誤解してほしくないのは、僕はなにも良い調教をされた馬にのみ乗るべきだ、と言っているわけではない。むしろ、あらゆるタイプの馬に乗るべきだと思う。良い馬からバランスや正しい扶助を学ぶことは、自分が進歩できるだけでなく、他の馬を助けることもできるようになるのだ。バランスや動きに対する正しい基準を身に付けていれば、馬の曲りや弱点も感じることができる。そうすれば、1頭1頭の馬に合った乗り方(例えば背中の弱い馬にどう座るべきか、といったこと)を考えられるようになる。
良い馬に乗り、学ぶことは、最終的にどの馬でも個性を尊重して接するというホースマンシップにつながることになると思っている。
そういうことを体験し、学ぶことができる場所を、ESJは提供したいのだ。

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